「入金予定日を過ぎたのに振込がない」「担当者と連絡がつかなくなった」 BtoBビジネスにおいて、売掛金の未回収は単なる「事務的なミス」では済まされません。特に中小企業にとっては、一件の大きな未回収が自社の資金繰りを直撃し、最悪の場合は「黒字倒産」を招く引き金となります。
「長年の付き合いだから」「もう少し待てば払ってくれるはず」という甘い期待は、経営において致命傷になりかねません。相手方の資金繰りが悪化している場合、回収はまさに「早い者勝ち」の様相を呈します。
今回は、売掛金トラブルに直面した際、自社を守るために「最速」で取るべき法的アクションを解説します。
❶| なぜ「スピード」がすべてなのか?
売掛金回収において、時間は最大の敵です。放置することで、以下のようなリスクが加速度的に高まります。
- 他社に先を越される: 相手方に残されたわずかな資産は、先に差し押さえや交渉を行った債権者に流れてしまいます。
- 時効の成立: 商法改正により、債権の消滅時効は原則として「権利を行使できることを知った時から5年」ですが、それ以前に相手方が倒産・消滅してしまえば回収は不可能です。
- 証拠の散逸: 時間が経つほど、当時の担当者の記憶や関連メール、納品書などの証拠が紛失しやすくなります。
❷| 【ステップ1】内容証明郵便による「最後通牒」
まず着手すべきは、弁護士名義での「内容証明郵便(配達証明付き)」の送付です。
単なる督促状と異なり、弁護士名義で送ることで相手方に「このままでは裁判沙汰になる」という強い心理的プレッシャーを与えます。
- 効果: 支払いの意思を確認するだけでなく、時効の完成を猶予(6ヶ月間)させる効果があります。
- ポイント: 「〇月〇日までに支払わなければ、直ちに法的措置に移行する」と明記することで、優先的に支払わせる動機付けを行います。
❸| 【ステップ2】「仮差押え」で資産を凍結する
「裁判をして勝訴してから回収する」という手順では、数ヶ月から1年以上かかってしまいます。その間に相手が資産を隠したり、他へ支払ったりしてしまえば、勝訴判決はただの紙切れ(画餅)になります。
そこで有効なのが「仮差押え」という手続きです。
- 概要: 裁判が始まる前に、相手方の銀行口座や売掛金、不動産などを一時的に凍結する手続きです。
- メリット: 相手方は口座が使えなくなる、あるいは取引先からの信用を失うことを恐れ、この段階で「全額払うから解除してほしい」と泣きついてくるケースが非常に多いです。
- スピード感: 証拠が揃っていれば、申し立てから数日で決定が出ることもあります。
❹| 【ステップ3】支払督促と民事訴訟
① 支払督促
裁判所から相手方に支払いを命じてもらう簡易的な手続きです。相手方が異議を申し立てなければ、確定判決と同じ効力(強制執行ができる状態)が得られます。
② 民事訴訟(通常訴訟)
金額が大きく、相手方が「仕事の内容に不備があった」などと反論してきている場合に選択します。弁護士が代理人となり、契約書や納品実績に基づき、法的に支払義務を立証します。
❺| 相手方に現金がない場合の特殊な回収法
もし相手方に現金がない場合でも、あきらめるのはまだ早いです。
- 債権譲渡の受領: 相手方がさらに別の会社に対して持っている売掛金を、自社に譲渡させる契約を結びます。
- 商品の引き揚げ: (契約に「所有権留保」の条項がある場合など)納品した商品を回収し、損害を最小限に抑えます。 ※注意:勝手に持ち出すと自社が罪に問われる可能性があるため、相手方の承諾を得ることが必要です。
- 相殺(そうさい): もし自社も相手方に対して債務(買掛金など)がある場合、それと相殺することで実質的な回収を図ります。
■まとめ
「あの会社、最近支払いが遅れがちだな」「社長と連絡がつきにくいな」という違和感は、倒産の前兆であることがほとんどです。
「催促するのは相手に悪い」という優しさが、結果として自社の従業員や家族を路頭に迷わせることになりかねません。
売掛金回収は、初動が1週間遅れるだけで回収率が劇的に下がります。「放置すれば会社が危ない」と感じたら、その直感を信じて、今すぐプロの弁護士にご相談ください。
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