「会社をたたむ(破産する)のは、もうどうしようもなくなった時の最後の手段だ」 多くの経営者様が、そのように考えていらっしゃいます。創業以来、心血を注いできた事業を終わらせる決断は、断腸の思いであることは間違いありません。
しかし、弁護士の視点から申し上げますと、会社破産は決して「敗北の証」ではなく、経営者様が再起するための「法的なリスタート(再出発)の手段」です。むしろ、「まだなんとかなる」と無理に引き延ばした結果、経営者個人やそのご家族まで取り返しのつかない状況に追い込まれるケースが少なくありません。
本記事では、会社破産を検討すべきタイミングについて詳しく解説します。
❶| なぜ「最後」まで粘ると危険なのか?
「会社を潰すのは、資金が底をついてから」という考え方は非常に危険です。 会社破産の手続きには、「裁判所への予納金」や「弁護士費用」といった一定の予備資金が必要だからです。
完全に資金が枯渇してからでは、破産の手続きすらスムーズに進められず、以下のような「最悪の状態」を招く恐れがあります。
- <従業員への給与未払い> 突然の解雇だけでなく、給与も払えない状態は、従業員の生活を破壊し、大きな法的・感情的トラブルに発展します。
- <不適切な資産処分(否認権の行使)> 焦って一部の債権者にだけ返済したり、親族に資産を隠したりすると、後に裁判所から否認(無効化)され、余計に事態が悪化します。
- <経営者の健康・精神の崩壊> 執拗な督促や資金繰りの心労により、経営者が心身を病んでしまうケースは後を絶ちません。
❷| 「むしろ破産を選ばないと危険」な3つのケース
具体的に、どのような状況であれば「破産」を前向きな選択肢として検討すべきなのでしょうか。
① 資金繰りのために「高利貸し」や「個人の借り入れ」に手を出している
銀行からの追加融資が断られ、いわゆる「街金」や「ファクタリング(給料・売掛金ファクタリング)」、あるいは親族・知人からの個人的な借金に頼り始めたら、それはレッドサインです。 これらは一時的な延命にはなっても、根本的な解決にはなりません。むしろ、周囲の人間関係まで破綻させるリスクが高まり、再出発の大きな妨げになる可能性があります。
② 社会保険料や税金の滞納が常態化している
社会保険料や税金を滞納している場合、年金事務所や税務署は訴訟手続を経ることなくいきなり差押をすることができます。事業を何とか継続しようとしていても、いきなり運転資金を差し押さえられてしまえば、事業継続が物理的に不可能になり、経営者の意思に反して事業停止に追い込まれてしまい、再出発の準備をすることもできず、経営者の再起を著しく困難にします。なお、これらの債権は個人の場合、破産しても免除されない「非免責債権」とされており、経営者個人が滞納している場合には、より注意が必要となります。
③ 経営者個人の資産を切り崩して会社を維持している
「自分さえ我慢すれば」と、役員報酬をカットし、個人の貯金や生命保険を解約してまで会社に注ぎ込んでいる場合です。 会社と個人は別の人格です。会社と一緒に経営者個人まで「無一文」になってしまっては、破産後の生活基盤が作れず、再起を図ることも難しくなってしまいます。「会社を畳んでも、経営者の生活は守る」というのが、法的な手続きの本来の目的の一つです。
❸| 会社破産を選択することで得られる「メリット」
「破産」という言葉の響きは重いものですが、法的に整理を行うことで得られるメリットは多大です。
- <支払督促が止まる> 弁護士が受任通知を送付した時点で、債権者からの直接の連絡や督促は基本的にストップします。
- <法的に債務が消滅する> 破産手続きが完了すれば、会社の債務は基本的に消滅します。
- <従業員の未払賃金立替払制度の活用> 会社にお金がなくても、国の制度(労働者健康安全機構)を利用して、未払い給与の8割程度を従業員に立替払いしてもらうことが可能です。
- <「自由財産」として手元にお金を残せる> 個人の破産も同時に行う場合でも、99万円以下の現金などは「自由財産」として残すことが認められており、翌日からの生活が保障されます。
❹| 決断のタイミングは「少し余力がある時」
会社破産を成功させ、経営者が穏やかな生活を取り戻し、再起を図るための最大のポイントは、「経営者が、もう少しは大丈夫かと思っている段階で相談すること」です。
- 取引先に最低限の迷惑をかけるだけで済む段取りを組む。
- 従業員の再就職支援の時間を確保する。
- 裁判所へ納める費用を確保する。
これらは全て、資金が完全にゼロになる前でなければできません。
■まとめ|いずみ法律事務所からのメッセージ
「破産は恥だ」「逃げだ」と思う必要はありません。経営者様は、これまで社会のために、従業員のために精一杯戦ってこられました。その戦いに、法的なルールに則って終止符を打つことは、次なるステップへの「勇敢な決断」です。
当事務所では、経営者様のお話をじっくりとお聞きし、破産だけでなく、民事再生や任意整理など、最適な解決策をご提案いたします。 「もしかして、もう限界かもしれない」と感じたら、その直感を大切にしてください。早めのご相談が、あなたと、あなたの大切な人々を守る鍵となります。
まずは一度、お気軽にご相談ください。共に最善の道を探しましょう。
弊所は、企業法務・民事再生での実績が数多くあります。安心して、お問合せください。
いずみ法律事務所 /代表弁護士 小泉 始
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